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HOMEろこ ハワイ     2002年 3月 〜 2003年12月

<ろこ ハワイ> ホノルル通信

Violin弾きのお美っちゃん〜1

……新規連載……

★ ハワイぼけ?


 十数年前にハワイに来た当初、やはり同じ時期に日本から来ていたある女性と知り合った。東京生まれ、東京育ちで、ハワイには夫の勤務に伴って来ていた。「博物館や美術館、コンサート会場がすぐそばにある東京に早く帰りたい」と彼女は繰り返していた。そばにそういう施設があると、「文化」を感じるらしいのだ。

(写真はお美っちゃん)

 学生生活と結婚生活を通して、私は京都に長く住んだ。文化と伝統と歴史の町というにふさわしい。博物館の内部はもちろんのこと、その周辺をひとりで散策するのにも、ロマンと文化の風に当たることができると思った。

 しかし、美術館のそばに住んでいるからといって、そこの人たちがいつも心の中で美を追求しているわけではない。洪水のようにあふれている音楽会のどれに行きたいかが判断できないでいて、「コンサートホールが近くにあるから文化を感じる」ということでもない。

 「ハワイぼけする」ということばをよく耳にする。ところが、「夏休みぼけ」「お正月ぼけ」などとは言っても日本のある地方の地名で、例えば、「青森ぼけ」とか「鹿児島ぼけ」とは言わないし、私は聞いたことがない。

 「ハワイぼけ」とは、身も心も定まらない浮かれた気分が、なんとなく継続している状態なのかもしれない。だが、ポワッとした空気の常夏の島にいるから、ハワイぼけするのではないと私は思っている。

 
日常の循環が淀まずに、その人が心の中で目指すものをもっていることが大切なのだ。心に伝わる周波は、大きな声でも小さな声でもない。速いものでも遅いものでもない。それぞれの「心の内の音」と共鳴したものをつかんだ瞬(とき)に、その地の時空間が、自分自身のものになってゆく。

 眩しく、目のくらむようなハワイの大きな太陽の光の輪。真っ青な空と海。吹き抜ける風。それらがただ頭の上を通り過ぎて日々が循環するだけでなく、小さな音の抑揚を聞き、力強い映像を個々の心に焼き付けることが出来るのであれば、そこには、「ハワイぼけ」などという世界はやってこないだろう。

 強烈な太陽と、空と海と、その風を受けながら、一見穏やかで何もなさそうに見えるハワイの表層の内側で、大きな「炎」をいだきながら生きている人々を知らずに、ハワイを訪れては去っていく人がなんと大勢いることだろう。

 心の中に聞こえ続ける音楽、人々と交したことば、共に過ごした時間……そのひとつひとつが心の奥深いところで形になる。目に眩しいだけではない、そんな「ハワイ」との出会い。心の中から発するものとの絶え間ない「創作」の日々がある。

 
喧噪の都会のコンサートホールや美術館の壁からは決して生まれない、私自身の内なる炎を持ち続けたいと思っている。



(つづく)


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このコラムはハワイ・ホノルルの語学研修所の提供です。月2〜3回のペースで更新される予定です。


Violin弾きのお美っちゃん〜45

……最終連載……

★ 島に色がある……

            
 世界地図で見るハワイ諸島は、消しゴムのかすが転がっているように見える。

 人が行くことの出来ない小さな岩礁も数に入れると、約130の島が存在する。手の平でサッと払えばなくなりそうなほど頼りなく聞えるが、島々は長い火山脈の帯で固く繋がれている。

 その中で、主要な島は8つ。ここホノルルのあるオアフ島から見て、東の島に行くにつれて若くなり、西の島ほど年寄りになる。

 8つの島には「島の色」がある。
カウアイ島は紫、オアフ島は黄色、マウイ島はピンク、ハワイ島は赤といったように、7島はハワイの花々や虹を思わせるような明るい色を持っている。


 また、7島はニックネームを持っており、それぞれの島の特色を表わしている。オアフ島の西、緑豊かな高齢のカウアイ島は「庭園の島」、東のモロカイ島は「友情の島」、更に南東、1番大きくて若いハワイ島は「蘭の島」などと呼ばれている。

 だが残念なことに、マウイ島の南西にあるカホオラヴェ島だけは、親しまれるべきニックネームがない。そして、まるで島の持つ歴史を表わすかのように、島の色も灰色とされている。

 主要8島は、他に、カウアイ島の西隣にニイハウ島、マウイ島の西隣にラナイ島という小さな島がある。このラナイ島に私が親しみを覚えたのは、友人のナンシー・ヤングを通してのことだった。それまでは聞いたことがあっても、その島がどこに横たわっているのか地図で確かめたことがなかった。

 ナンシーは3年前にホノルルで定年退職した後、ラナイ島に移り住み、そこで教育などに関わる活動をして、今年の8月、ホノルルに戻ってきた。自宅はホノルルにあるので行ったり来たりの生活だった。ラナイ島で3年間、ゆったりとした時間を過ごした彼女は、「ラナイ島での3年間は私の人生を変えた」と言った。

 人口約3000人のラナイ島には病院はひとつ、映画館もひとつ。素敵なホテルがあって保養には最高の島だという。道には信号がなく、ナンシーはどこへ行くにも自転車で出かけ、出会った土地の人々とはすぐに友達になり、ゴルフやテニスも楽しんだ。

 ハワイでは隣島に行くのに小さなペットを連れて一緒に飛行機に乗ることが出来る。ただし、ペットはペット用のカバンに入り、飼い主の座席の下でおとなしくしていることになっている。そうしてナンシーの愛犬ティッキーとアイコも、オアフ島とラナイ島間を飛行機で往復した。

 のどかな田舎の風景が想像されるラナイ島の南東に、灰色のカホオラヴェ島がある。主要8島の中で1番小さい。島はハワイアンの神、カナロアから名付けられ、実はハワイアンにとっては「聖なる島」であった。

 伝説によると、その昔、カホオラヴェ島では2つの女神の心の不一致により対立が起こったという。そして島はまるで呪われたかのように、荒れ果てた土地として知られるようになっていった。

 1800年代はじめ、カアフマヌ女王が罪人をカホオラヴェ島に島流しをしていた。1800年代中期には、島にヤギとヒツジがはびこって、ハワイ原産の植物を食い荒らしてしまった。

 さらに第2次世界大戦が始まると、米海軍がカホオラヴェ島を砲撃の練習場として押収した。それは1990年まで50年間も続けられた。呪いは1度や2度ではなかったのだ。

 その後1994年にハワイ州に引き渡され、10年計画で島の大掃除がされていた。そして10年後の今年11月11日、ハワイアンにとって待ちに待った日を迎えたのだった。11月12日に式典が行なわれ、カホオラヴェ島は正式に米海軍からハワイ州政府に返還されたのである。

 それでも不発弾など「兵器の残骸」はまだまだ残っているので撤去作業は続けられ、04年3月12日までに撤退することになっている。これからはもう「呪いの手」が入ることは出来ない。この島に限り、商業を目的として用いられることもない。

 これからカホオラヴェ島は、ハワイアンの手によってハワイ原産の植物が植えられ、昔ながらの風景を取り戻して、先住民ハワイアンの生態系やその文化を復興していくことだろう。

 今から10年後、島にはニックネームが付けられているだろうか。島の色はその時でもまだ灰色なのだろうか、と気になる。

 ハワイアンは、ハワイの明るく鮮やかな自然の色に敬意を表して、衣類には地味な「大地の色」を身にまとうと聞いたことがある。そうすることで調和するのだと。

 するとやはり、ほかの7つの島々がそうであるように、島の色は花々のようであり、蒼い海や青い空のようであり、真っ白な雲のようであり、大空にかかる虹のようでなければならない、と私は思う。(つづく=写真はオアフ島のHauula Loop Trail)


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このコラムはハワイ・ホノルルの語学研修所の提供です。月1〜2回のペースで更新される予定です。

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